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情報の非対称性と英語学習

更新日:2022年11月10日

タイトルから何について書かれているか分からないと思います。今回は、そもそも論ですが、私がブログを書いている理由について綴りたいと思います。


周知の通り、様々な専門分野が細分化される現代、数多くの専門分野には、情報の非対称性が存在します。一例を挙げると、我々一般人が中古車を購入する場合、車の外見は(修理歴改竄の可能性がありますが)見た目で判断できても、メカニックに関しては殆ど分からず、ディーラーを信頼したり値段である程度判断したりするしかない状況です。語学教育も然りです。教師と生徒の間には、歴然とした知識(情報)の差が横たわっています。だから学校や塾に通ったりするのですが。


この関係性は、医者と患者のものにも似ています。口コミサイトには「物腰が柔らかく、診察から丁寧で、すっかり完治しました」「診察から高圧的な態度で、医者の言う通り治療を続けたが、全く良くならなかった。逆に悪化した。当病院には二度と行きません」など様々なコメントが並び点数化されています。これらは、果たして鵜呑みにして良いのでしょうか。


もちろん額面通り受け取る人はいないと思いますが、各コメントの信憑性を吟味して信用に値するどうかを判断されているのではないでしょうか。しかし、患者は、往々にして症状や治療の難しさの度合いを知らないことが多いのではないでしょうか。なので言い方は悪いですが、大した医者でもないところへ軽い症状の患者が通院し、完治して絶賛することもある一方で、かなりの難病で、どの医者が診ても症状が改善されない中、最善を尽くし延命したのに「治せなかった。二度と行かない」と酷評することもあるのではないでしょうか。これは極端な例ですが、私が問題にしているのは、専門知識を持っていない私達が果たして客観的に正当な評価ができるか、またしているかどうかです。


当校のような言語教室や学習塾の場合、受講生の結果で評価をされることが多いようです。それは、◯◯高校や◯◯大学入学、英検◯級合格やTOEIC高得点取得などです。そのスタンスに基本的には賛成です。と言うか異議はありません。しかし、英語力を伸長させるのは、教師ではなく、学習者本人だということを忘れてはなりません。教師として私にできることは、受講生の能力を引き出す支援です。それは、医療にも似ています。好例は、外科医が手術を成功させ、その後患者が節制もせずリハビリも手を抜き、完治しない状況です。


当校は、基本的に週1コースを開講しています。必要に応じて個別コースも取る受講生もいます。いずれにしても週1の授業に対して予習復習を課し、4技能を絡めた授業を行い、主に英語のやりとりを通してミリ単位で向上する英語習熟度を測っています。現在の英語力を正確に把握することで受講生が受け答えできる英語のやりとりを行うことが可能になります。同時に、適度な認知負荷を掛け続け、習熟度伸長の促進を図っています。


そこで、前述の「英語力を伸長させるのは、教師でなく、学習者本人だ」に戻ります。様々な認知活動が起きている授業について、私の言語学習及び習得の考えと共にできる限り細かく綴っているのが、本ブログです。拙文ではありますが、これを読んでいただくことで教師と受講生間に存在する情報の非対称性を少しでも解消してもらおうと努めています。


なぜそのようなことをするのか。理由は、二つあります。一つは、情報共有することによって言語習得とは何かを知っていただき、正しい語学学習を実践してほしいからです。「正しい」というのは、語弊があるかもしれません。学習者の学習遍歴は、それぞれ異なるが故に万人に合った唯一の教授法は存在しないので、ここでは「間違いのない」に訂正させてください。それからもう一つは、私を含めた語学教師を(ここでは敢えて)正しく評価できるようになってほしいからです。


ことばを学ぶという行為は、皆さんが思っている以上に複雑な認知活動が伴います。そして日々の学習の積み重ねが習熟度向上に寄与します。学生の受講生には、毎月具体的な目標を掲げさせ、弱点克服に意識を向けさせています。また、親御さんには、受講生のお子さんに必ず授業後「今日はどうだった」ではなく「何を勉強したの」って訊いてあげてくださいとお願いしています(ブログ「親子で学ぶ『幼児英会話コース』」を参照)。なぜなら前者は、「良かった」や「あまり良くなかった」で終わる質問ですが、後者は、学習内容を詳述することで授業の振り返りができるからです。そもそも授業を受けている受講生自身が、自身を客観的に見つめること自体簡単ではありません。これには、日本語能力も問われ、メタ認知の活性化にも繋がります。このように効果的且つ効率的な言語学習には、受講生の自律的な予習復習と親御さんのご協力が欠かせません。そして教師の微に入り細を穿つ支援です。


日々研鑽しながら優れた教材を開発しているECCや公文の英語など、巷には英語教育で溢れています。ご存知の方も多いかもしれませんが、英検と英検関連の学参書を数多く発刊している旺文社とステップワールドは、同じ所在地です(これ以上は申し上げません)。しかしこれらに所属する語学教師は、正直言って玉石混交です。自分に合った教師かどうか見極めるためにも、日々の授業で何が行われているか理解し、教師だけでなく受講生自身も評価できるようになるためにも、定期的にブログを書いています。

最後に、最近読んだ本の中で、一冊お勧めして終わりたいと思います。挑発的なタイトルですが、周りとの関係希薄化、スマホオンラインゲーム依存症、表層的な英語教育やノウハウ詰め込み授業で国語力が低下していると警鐘を鳴らしています。日本語を媒介にして学ぶ英語だけでなく、他教科の理解にも国語力が要です。英語学習だけでなく、毎日使っている日本語も疎かにしてはいけないと感じます。是非お手に取ってみてください。



次回は、「自立性と自律性」について書きたいと思います。


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